ショートショート4「花粉症の行方」

遂に私は、スギ花粉症を完治させる薬を開発した。

 

これまでに20年を要した。スギ花粉症の根本原因となる遺伝子情報に、直接働きかける薬を開発することができた。そこから実際に市場に出回るまでの時間は早かった。厚生労働省を認可を取得する担当者が頑張ってくるれたのだろう。売れ行きも上々だ。そりゃそうだろうと思う。花粉症に悩まされる人はかなりの人数に及んでいると聞いている。会社の売り上げに大きく貢献することができて表彰を受けたし、マスコミにも引っ張りだこだ。

 

それから半年後・・・。

 

ちょっと風邪を引いたようなのでかかりつけの病院にかかることにした。

 

「今日はどうされました??」

「昨日からのどが痛いんですよ。風邪の初期症状のような気がします。」

「そうですか、それでは抗生剤をだしておきましょう。」

「ありがとうございます。宜しくお願いします。」

「ところでね、あなた、花粉症を完治する薬を開発されましたよね??」

「そうなんですよ!!あれから人生が変わりました!みんなから感謝されるようになりましたー。」

「それは良かったですね。こっちは商売あがったりですよ。困るんですよねー、そんなことされると。」

「・・・はい?どういうことですか・・・?」

「いやだからね、困るんです。花粉症を完治する薬を作っちゃうと。患者が来なくなるじゃないですか。こっちだってね、花粉症完治の薬なんてのはいつでも作れたんですよ。わざと作ってなかったんです。」

「・・・。はあ。で、どうしろと?」

「うん、まあとりあえず死んでください。」

 

医師はおもむろに懐から拳銃を取り出し私に照準を合わせたのだった。

ショートショート3「意識高い系のシャワー」

私はシャワーである。

 

シャワーというのは水やお湯を適当な強さ、水量で使用者の体に当てる役割を持っている。非常に単純な作業ではあるものの、意外と難しいのである。隣の山田さんのお宅で活躍しているシャワーと会話する機会があって、その時にそのシャワーは愚痴をこぼしていた。どうやら、ちょっとでも弱い水量になると山田さん(特に奥さん)がメチャクチャきれるらしい。

 

私はそんなことにならない。旦那さんや奥さんの顔色を見ながら、つまり顧客満足の視点で水量や強弱はもちろん、水の太さを一本一本変えているのである。これだけの意識を持つシャワーは世界中探してもそうそういないと思う。間違いなく旦那さんと奥さんの心を鷲掴みにしていることだろう。

 

 

 

「ねえ、あなたー?、最近シャワーの出、悪くなーい??」

「そうだなー、そう言われるとそうかも。」

「今日、ホームセンターでシャワーヘッド買ってきたんだけど取り換えていい?」

「いいよ。」

ショートショート2「巫女がコンビニで買いたいもの」

その日、いつも通りコンビニでバイトをしていた。

 

コンビニは今や何でも販売している。食品、日用品はもちろん銀行ATM、各種チケット、郵便ポストさえある。コンビニで手に入れられないものなんてないんじゃないか、そんな風に思っている。

 

そんなコンビニでレジ打ちをしていたあの日に、巫女がやって来た

 

巫女独特の白衣と緋袴という出で立ちで入り口から入ってきたのだ。巫女さんがコンビニで何を買うのだろうか?まあでも、コンビニに無いものはない。お求めのものをすべて揃えることが出来るだろう。お神酒だって日本酒があるし、捧げ物である野菜もある。心配ない。

 

たが、巫女はひたすら商品を探している様子。欲しいものがないようだ。いやいや、そんな事はないはずだ。必ずある、欲しいものは。

 

巫女が意を決したようにその店員に話しかけてきた。

 

「あのー、・・・。」

「何でしょう?ウチのコンビニでは何でも取り揃えていますよ!」

「・・・・・・、玉串奉奠で使う日本最高級の榊はありませんか?」

「それはさすがに、無いっす笑。」

ショートショート1 「消費者庁オススメの家庭用スティンガーミサイル」

TVの中で通販番組の販売員が一生懸命商品のPRを行っている。

 

「さあ、今日は消費者庁がオススメしている家庭用スティンガーミサイルをご紹介致します。

さて、第二次世界大戦が終わってから早くも100年以上が経過しました。この100年を振り返りますと、結局のところ世界のどこかで戦争は行われていました。非常に残念ではありますがこれは事実ですね。こういう世知辛い世の中だと、もう自分の身は自分で守るしかありません。そこで、この商品です‼️この家庭用スティンガーミサイルはロックオンした敵の熱を感知して、素人でも必ず着弾させることが出来る優れもの。しかも、一台10,000円てまさにリーズナブル‼️是非、この機会にお求めください!!」

 

放送終了後、この販売員は番組スタッフと共に打ち上げに行った。そこで、持論を展開した。

 

「今日さあー、家庭用スティンガーミサイルだっけ⁉️あれ紹介したんだけどさあー、そもそもさあー、やっぱ相手を信頼しなくちゃいけないと思うんだよねえー。こういう武器を持つってことはさー、相手が攻撃してくること前提だし、相手を受け入れる選択肢を全く持ってないということなんだと思うんだよねー。「和を以て貴しと為す」じゃないけどさー、そういう感覚を大事にしたいよねー。」

 

番組スタッフは販売員の持論に大いに賛成し大いに盛り上がった。

 

明くる日、番組スタッフ数名が販売員の自宅前を歩いていたところ、販売員が花壇に水をやっていた。販売員が番組スタッフに気が付くと、ものすごい形相で部屋の中に戻りあの家庭用スティンガーミサイルを肩に抱えて、番組スタッフに照準を合わせ始めた。

 

「販売員さん!ちょっと待って!なんでそんなことするの??昨日あれだけ言ってたじゃないですか、相手を信頼しようって!」

「はあ?そんなこと言ったっけ!?本音と建て前に決まってるでしょ。」

書籍紹介4「坂の上の雲1~8」著者:司馬遼太郎

言わずと知れた司馬遼太郎の代表作の一つです。

 

私が初めて読んだのは22才の時。当時の会社の上司に薦められました。この時から司馬遼太郎作品にハマってしまって「龍馬がゆく1~8」「幕末」「十一人目の志士」「殉死」「峠」「最後の将軍」等、読み漁ったお記憶があります。

 

この本は正岡子規秋山好古秋山真之を軸にした内容です。日露戦争が如何にして起こってどのようにして終わったのかが分かります。

 

日露戦争と言われても特にピンとこないですよね。歴史の勉強でちょっと触れたなあってくらいだと思います。私もそんな感じでした。んん、日清戦争の後に起こった戦争だよな、ってくらいなもんです(恥ずかしい笑)。

 

日露戦争明治37年(1904年)に起こりました。37年前までチョンマゲを結っていた民族が世界最大と言ってもいい陸軍(特にコサック騎兵)と海軍に挑んだ点や、白人中心の世の中において黄色人種が反旗を翻した点、日清戦争前から約20~30年かけて大急ぎで建造された海軍が誰がどのように作ったのかという点、このあたりが大変興味深いところです。また、話の中で陸軍の明石元二郎大佐が出てきます。この方が行った諜報活動というのがものスゴイ。ユダヤ人のリーダーやレーニン等、ビッグネームと渡り歩きながらロシア国内の革命運動を支援することでロシア軍の弱体化を実現していくところはまさに圧巻でした。

 

主人公の一人である正岡子規はご存知の方が多いと思います。

 

柿食えば鐘が鳴るなり法隆寺

 

この句で有名ですね。正岡子規は伊予松山の出身です。そこで知己だった秋山真之とその兄である秋山好古のことをご存知の方はそう多くないと思います。私もこの本を読んで知りました。

 

秋山好古は陸軍においてほとんど一人で騎兵部隊を建設した重要人物です。日露戦争では少将として従軍しました。強敵とされた「コサック騎兵団」と互角に戦い抜き重要な会戦で驚異的な粘り強さを見せます。

 

秋山真之は海軍の参謀です。日露戦争では少佐として従軍しました(途中で進級)。最も有名な成果としては日本海海戦においてそのほとんどの作戦を立案し東郷平八郎大将の指揮のもと、他にこんな例はないというくらい完璧な勝利に導いた方、というものです。

 

この本を読んで、日本人であれば過去にどんなことがあったか知っておくべき、ということを強く感じました。もともと歴史は好きだったのですが、知らないことが本当に多いなと思います。もっともっとたくさんの本を読んで勉強していこうと決意させてくれた大好きな本の一つです。
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書籍紹介3「五体不満足」著者:乙武洋匡

2/18(月)に読み終えた本です。

 

1998年に出版された本書はかなり注目を集めた記憶があります。

 

正直、ちょっと暗いかなーと心配していましたが全くそんなことはありませんでした。

 

一番印象にう残っている一言は「20歳になるまで自分が障がい者であることを意識してこなかった」というものです。これだけ見たら「はあ??」って感じですよね。なぜそのような意識になったかというのは是非本書を読んでいただきたいですね。

 

私が理解したことを書き出してみると、要は幼稚園、小学校、中学校、高校と関係した方々(担任やクラスメイト)に恵まれていたということ、ご両親の接し方素晴らしかったということ、そして何より乙武さんが常に前向きにやりたいことに取り組んでいたこと、これらの要因によるものと考えました。

 

本書を読んで私が決意したことは、「もっと着るものにこだわっていこう」というものです。特にここ10年くらいはロクに考えもせず服を買ってきたような気がしますので、もう少しこだわりを持つようにしていきます。私がなぜそんな決意をしたかについては是非本書を読んで確認してください。

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書籍紹介2「未来の年表」著者:河合雅司

2017年に購入し読んだ本です。

 

読む前にどんなことが書いてあるか想像しました。私が考え方ことは以下の通りです。

 

1.高齢者の増加による葬祭場の増加

  身の回りでも葬祭場が増えてきているなという印象がありましたので真っ先に

  これが思い浮かびました。ビジネスとして捉えた場合、従来と比較すればかなり

  大きな市場になるはずです。世の中にはこういったビジネスチャンスをかぎ分け

  勝ち取っていく人が一定数存在することを考えると、自分の中ではこの仮説は

  かなり自信がありました。

 

2.空き家の増加

  まあこれは当たり前ですよね。人口は減ると言われていますからそうなれば

  当然空き家が増えてきます。私はここにも大きなビジネスチャンスがあると

  感じています。最近、池の水を全部抜いて在来種を守ろうというテレビ番組が

  頻繁に放映されています。これを見て、空き家対策に使えるのではないかと

  考えました。やはりテレビによる宣伝効果はバツグンですから、勢いに乗って

  商売をする人が増えてくるのではないかと考えています。

 

んで、実際に書いてあったことはというと、上述の視点はもちろんのこと、もっと踏み込んで「火葬場不足」であったり「国立大学が倒産の危機」「未婚大国の誕生」「自治体の半数が消滅の危機」といった内容が書かれていました。これを読んでいると「お先真っ暗!」の感が否めませんが、このような問題に対してどのような対策を講じるべきかについても論じていてかなり興味深い内容になっています。

 

是非読んでみてください。

 

さてさて、10年後、20年後、30年後の自分はどこで何をしているのやら・・・。

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