ショートショート1 「消費者庁オススメの家庭用スティンガーミサイル」

TVの中で通販番組の販売員が一生懸命商品のPRを行っている。

 

「さあ、今日は消費者庁がオススメしている家庭用スティンガーミサイルをご紹介致します。

さて、第二次世界大戦が終わってから早くも100年以上が経過しました。この100年を振り返りますと、結局のところ世界のどこかで戦争は行われていました。非常に残念ではありますがこれは事実ですね。こういう世知辛い世の中だと、もう自分の身は自分で守るしかありません。そこで、この商品です‼️この家庭用スティンガーミサイルはロックオンした敵の熱を感知して、素人でも必ず着弾させることが出来る優れもの。しかも、一台10,000円てまさにリーズナブル‼️是非、この機会にお求めください!!」

 

放送終了後、この販売員は番組スタッフと共に打ち上げに行った。そこで、持論を展開した。

 

「今日さあー、家庭用スティンガーミサイルだっけ⁉️あれ紹介したんだけどさあー、そもそもさあー、やっぱ相手を信頼しなくちゃいけないと思うんだよねえー。こういう武器を持つってことはさー、相手が攻撃してくること前提だし、相手を受け入れる選択肢を全く持ってないということなんだと思うんだよねー。「和を以て貴しと為す」じゃないけどさー、そういう感覚を大事にしたいよねー。」

 

番組スタッフは販売員の持論に大いに賛成し大いに盛り上がった。

 

明くる日、番組スタッフ数名が販売員の自宅前を歩いていたところ、販売員が花壇に水をやっていた。販売員が番組スタッフに気が付くと、ものすごい形相で部屋の中に戻りあの家庭用スティンガーミサイルを肩に抱えて、番組スタッフに照準を合わせ始めた。

 

「販売員さん!ちょっと待って!なんでそんなことするの??昨日あれだけ言ってたじゃないですか、相手を信頼しようって!」

「はあ?そんなこと言ったっけ!?本音と建て前に決まってるでしょ。」