ショートショート4「花粉症の行方」

遂に私は、スギ花粉症を完治させる薬を開発した。

 

これまでに20年を要した。スギ花粉症の根本原因となる遺伝子情報に、直接働きかける薬を開発することができた。そこから実際に市場に出回るまでの時間は早かった。厚生労働省を認可を取得する担当者が頑張ってくるれたのだろう。売れ行きも上々だ。そりゃそうだろうと思う。花粉症に悩まされる人はかなりの人数に及んでいると聞いている。会社の売り上げに大きく貢献することができて表彰を受けたし、マスコミにも引っ張りだこだ。

 

それから半年後・・・。

 

ちょっと風邪を引いたようなのでかかりつけの病院にかかることにした。

 

「今日はどうされました??」

「昨日からのどが痛いんですよ。風邪の初期症状のような気がします。」

「そうですか、それでは抗生剤をだしておきましょう。」

「ありがとうございます。宜しくお願いします。」

「ところでね、あなた、花粉症を完治する薬を開発されましたよね??」

「そうなんですよ!!あれから人生が変わりました!みんなから感謝されるようになりましたー。」

「それは良かったですね。こっちは商売あがったりですよ。困るんですよねー、そんなことされると。」

「・・・はい?どういうことですか・・・?」

「いやだからね、困るんです。花粉症を完治する薬を作っちゃうと。患者が来なくなるじゃないですか。こっちだってね、花粉症完治の薬なんてのはいつでも作れたんですよ。わざと作ってなかったんです。」

「・・・。はあ。で、どうしろと?」

「うん、まあとりあえず死んでください。」

 

医師はおもむろに懐から拳銃を取り出し私に照準を合わせたのだった。